野球のこと

2008年10月29日

「ファイターズに帰ってきてください。」
とてもうれしいコメントをブログに寄せていただいています。
また前回お話したように、
「なぜファイターズを退団したのですか?」
との質問が多いことに、
いつかはお答えしなければと、
私自身考えていました。
シーズンも終了し、
来シーズンに向けてファイターズが再スタートした今、
本当の理由について話をするタイミングだと思い、
今日からしばらくの間、
少しずつ投稿させていただきます。

昨年ヒルマン監督退任に伴い、
私も球団のフロント入り要請をお断りして退団しました。
そのときの公式コメントが、
「ヒルマン監督が退団するときは、
自分も退団すると決めていました。」
でした。
これは正直なところですし、
ヒルマン監督の要請を受け、
ヘッドコーチに就任した時点で、
心に強く決めていました。
また、このことは近い人達には、
何度かお話をさせていただいていました。
そして、この気持ちはヘッドコーチを続けるうちに
より強くなりました。
ヒルマン監督より退団することを聞かされたとき、
「私にとっても最後のシーズンになる。
ヒルマン監督に最高の花道を、
そして自分自身もけじめをつけるときである。」
と決断しました。

なぜ私がヒルマン監督に退団に伴い、
一緒に退団することを決意したのか。
この理由についてお話ししたいと思います。
2001年2軍監督に就任した私は、
ファイターズが長い低迷を抜け出し、
近い将来日本一になり、
そして常勝チームになることを夢に描きました。
そのために、「1軍の勝利に貢献できる選手の育成」
を目標に定めました。
これまでも多くの指導者の皆さんが育成に携わって来ました。
その誰もが一生懸命頑張って指導にあたって頂きました。
しかし、誰もが一生懸命に頑張れば頑張るほど、
ファイターズは低迷を続けたのです。
そこで私は、結果がでないのは頑張る方向性に問題があるのではと、
疑問を抱きました。
これまでの指導者の頑張る方向性は、
結果に対して叱責し、
問題点を指摘、改善するために教え、
そしてより多くの練習を課す、
練習をやらせてきたのです。
怒る、教える、やらせる
のスリーパンチで選手を指導していたのです。
このような指導方法は、ファイターズのみならず、
あらゆるスポーツ界の指導方法の主流でした。
怒れば怒るほど選手は萎縮し、
教えれば教えるほど選手は考えることをやめ、
やらせればやらせるほど、サボろうとするのです。
この方向を転換すること、
それが2001年からファームで取り組み始めた指導方針でした。
結果に対して怒ることをやめ、ショックを受けた選手を励まし、
教えれば考えなくなる選手に、自ら考えてもらえるように、
そしてやらせることをやめ、自ら進んで取り組めるような環境づくりをしました。
これまでとまったく違った方向で指導を始めました。
このことで、チーム内外から大きな指摘、反発を受けました。
「甘やかしすぎだ」
「育成の本質を間違えている」
など多くの指摘は、
確かにこれまでの指導方法に照らし合わせてみれば、
そのように映ることは予想できていました。
しかし、実際に受けた批判は想像を超えるくらい大きなものでした。
そんな中、
私たちファームの指導者は、将来の日本一、常勝チームを夢見て、
あらゆる逆風に立ち向かっていきました。
「今はこんなに辛い思いをしているが、
必ず実を結ぶ、
今に見ていろ。」
と強い信念を持って取り組みました。
そんな時ファームの指導者、そして私は、
将来選手たちがどんどん1軍に上がり、
そしてその選手たちが主力になったとき、
我々も1軍で優勝を目指して戦いたいと、
思うようになりました。
その思いはやがて、
「私の将来の夢、目標は1軍監督として、
手塩にかけた選手たちとともに日本一を目指すことでした。」

そんな中ヒルマン監督が1軍監督に就任するとの話が舞い込みました。
そして、旧知のヒルマン監督からヘッドコーチの要請を受けました。
私はもっと時間をかけてファームで選手育成をしたい思いが強く、
要請受諾には躊躇がありました。
しかし、ヤンキース時代に築き上げた信頼関係、
外国人監督の成功をサポートすることは、
自分にとっても大きな挑戦になると、
考えた末に決断しました。
その時に、「将来監督になる夢」を
私が持ち続けて№2であるヘッドコーチをすることは、
ある意味ヒルマン監督の失脚は、自分へのチャンスにもなりかねません。
このような思いをもって監督をサポートすることは、
許されるべきことではありません。
全力を挙げてサポートすること、
それは一蓮托生でなければできないことと感じました。
「将来の自分の夢は一度捨てて、
全身全霊を傾けてヒルマン監督をサポートしよう。
そして、監督退団は、私にとっても退団、
一蓮托生を決めたのです。」
そんな決意を持ち、昨年までヘッドコーチとして全力を尽くして来ました。
またヒルマン監督退団=自分も退団する気持ちは、
毎年のように強くなってきました。
その理由は次回にお話をさせていただきます。







同じカテゴリー(野球のこと)の記事画像
甲子園
プロ野球開幕!
侍ジャパン世界一
決勝戦!
最終調整
侍ジャパン
同じカテゴリー(野球のこと)の記事
 甲子園 (2023-07-26 08:02)
 プロ野球開幕! (2023-04-02 08:28)
 侍ジャパン世界一 (2023-03-23 14:17)
 決勝戦! (2023-03-21 22:06)
 最終調整 (2023-03-20 05:41)
 侍ジャパン (2023-03-13 14:12)

この記事へのコメント
読んでて、なんか涙が出そうになりました。
今のファイターズの強さの根底がここにあるわけですね。

いずれ、現場での活躍があると思いますが、
いつまでもその情熱を持ち続けて下さい。
心から、応援しています。
Posted by あたしたぬき.jp at 2008年10月29日 18:02
プロでも、育成の場であるファームは、学生野球とおなじなのですね。日本的ですね。大変だったんだな・・・と思いました。
選手達はそれを受け継いでいて
だから今のファイターズなんですね。
なんとなく、他のチームと選手達の雰囲気が違う意味が解りました。
そういう部分が好きなのです。
白井さん、と当時のスタッフ、コーチのおかげですね。
ありがとうございます。

今は監督・コーチは皆変わっていますけど、
チームとしてのそういう空気を無くさず、受け継いでいってほしいです。

いつの日か、またファターズのユニフォームを着てくださいね。
待っています。

WBCのコーチングスタッフに白井にさんはお話はないのでしょうか。
適任だと思っています。
Posted by sora at 2008年10月29日 18:34
難しいですね…。

やはりプロの世界は、厳しく、嫌でも常に人に見られています。

内外からの批判に立ち向かうコト、大変だったことでしょう…

やはり、白井さんに、ファイターズの監督をやっていただきたいです(;_;)
次回の更新も楽しみにしています。
Posted by 弥菜 at 2008年10月29日 19:25
白井さん、こんばんは。
今回のブログを読ませていただいて、勝手にですが…また、白井さんという“男"に、ひとりの男として惹かれました。今後、必ずNo1に成るべき方だと確信しております。また、今回のブログに書いておられた内容は現在、活動しておられる“講演会"や“企業研修"においても、きっと、受講された方がふと、立ち止まって考えさせられる内容だと思います。
これからも読むだけではなく、読んだあとに心に“何か"が残る内容のブログを期待しております。
Posted by tak at 2008年10月29日 19:58
お疲れ様です。

瞬きも惜しむほど一気に読ませて頂きました!
続きがとても気になります。
次回の投稿も楽しみにしておりますね!
Posted by ハム之進 at 2008年10月29日 20:12
なりほど、ファイターズを離れた理由がわかりました。

私の知るかぎり、ファイターズファンは白井さんの現場復帰を待ち望んでいます。

どうか、他球団などに決して行かないでください。
遠からず白井さんの力が必要になる日がきますから。
Posted by ファンより at 2008年10月29日 20:45
退団の理由を書き始めていただき、ありがとうございます。ご本を読んだときに、たぶん新しい指導法を取り入れられた時はバッシングを受けられたのではないか、と推察しておりましたが、今回お話を伺い、あらためて困難な状況の中で信念をつらぬかれたことに敬服しております。確かにファイターズは日本一になりましたが、白井さんが「今にみていろ」と思われてから実を結ぶまでの気の遠くなるような長さは、ご本人と関係者の方にしかわからないものと思います。白井さんのご指導を受けて開眼した選手の幸せ、白井さんと選手が長年かかって勝ち得た日本一をこの北海道で目の前で見ることができた幸せの尊さを感じます。つづきを楽しみにしております。
Posted by Keep going ! at 2008年10月29日 21:33
ヒルマン監督の退任と同時に白井さんが去ってしまう時
ヒルマンイズムを継承するために白井さんには球団に残ってほしいと思っていましたが

今回のブログを読んで気持ちが変わりました
白井さんの野球で「白井ファイターズ」をつくってほしいと思います

選手たちがどのチームよりも生き生きとプレーしているのは
ファームでのメンタルも含めたトレーニングの成果がでているからだと考えます

どうか、今の1軍でも選手が生き生きと思う存分プレーできる環境を作り上げてほしいと思います

近い将来そのような日が来る事を心待ちにしております
Posted by いけよ at 2008年10月29日 21:34
一息で読ませていただきました。まだ先の続く 白井さんの思い。
今のファイターズには やっぱり 白井さんが必要だ!!!というのだけは、確信しました。
今は秋期キャンプしていますが、今年のファームはどうだったんでしょう?
今はどうか 見守ってください。
近い将来ファイターズのユニフォームを着る時の為に。

お話の続きを 待っています。
Posted by kazu@fs at 2008年10月29日 21:40
白井さん、こんばんは。
田中賢介選手、三年連続ゴールデングラブ賞ですね。

続きもまた楽しみにしております。
それと、WBCのコーチに…と熱望する方も多いのかもしれませんが、私は白井さんにやってほしいとは思いません。
WBC自体が意味のあるものだとあまり思えませんので…
大好きな白井さんが
ファンや選手との壁がある古い体質、政治のような世界の歯車の一部になってほしくありません。
Posted by ハムフー at 2008年10月29日 22:20
こんばんは。更新ありがとうございます。

田中賢介選手の受賞コメントをご覧になりましたか?
「ファーム時代からお世話になった方々のお陰」
と感謝の気持ちを述べていますね。
本当に白井さんとの信頼関係が深い物と感じております。

ところで秋季キャンプが始まりましたが
相当厳しくやっている様子ですね・・・
成果は来年・再来年・更に先を見なければ
分りませんが、白井さんの考えを取り入れた
指導を実践して欲しいと願うばかりです。

それにしても白井さんは何とご自分に厳しいのか、
と今回の内容を読んで強く感じました。
「メンタル・コーチング」にも書かれていた選手時代の
ご自身の実践もその厳しさあってのものなのですね。


先日、ファイターズ関連の録画を整理していて
昨年放送のFFFFFを改めて観ました。
2006年のリーグ優勝を決めたふたつのビッグプレーに
関しての白井さんのインタビューを聴いて「鳥肌」が
立ちましたよ。(2塁の牽制刺し&サヨナラの走塁)

やっぱり・・・あの頃のファイターズの試合運びは
本当におもしろかったですね。
(また過去を振りかえってしましました^^;)

次回の更新を楽しみにしております。
Posted by たかきよ at 2008年10月29日 23:28
白井さんがず~っと頑張ってきた歴史、その心意気、ファイターズに対する愛情を読み取ることができて、とても感動してしまいました。
白井さんは凄い方なので、この想いをどう表現していいか…素人の私には難しいのですが。
ただ、1つだけ白井さんにお伝えできるとするならば…、
「本当にファイターズに監督として戻られる日を夢みて、ずっとずっと待っています!」
今回のブログを読んで、益々白井さんの暖かく情熱的な男っぷりを感じました。そして何よりも、白井さんの、選手に対しての真剣な眼差しや包み込むような笑顔、ファンに対しての心のこもった笑顔を忘れることはできません。
白井さん、またみんなで1つになって優勝を目指しましょうね!ファイターズは、今白井さんが必要です☆
Posted by みほ at 2008年10月30日 10:10
「メンタル・コーチング」にもお書きになっていましたが、
何しろ二軍監督1年目は、だんとつの最下位だったでしょうか。
強い批判の中、信念をよく貫けたと思いました。

上でお書きになっている人がいるように、田中賢介選手の受賞
コメントがコーチ冥利につきますね。
「練習の最初の1球を、日本シリーズの本番だと思え」と白井
ヘッドに指導されたとも語っていました。
そう言えば、守備位置も背番号も同じです。

つづきの話も楽しみにしています。
Posted by モト at 2008年10月30日 13:12
私も運動部だった学生時代、怒られると萎縮していやになりました。
誉められるほうが、自信になってそのスポーツがどんどん好きになって、好きだからもっとやりたくなって、そのぶん上達して、また自信になって・・そうして上達していったように思います。
勉強にしてもそうでした。
自分の可能性をひきだしてくれた先生に今でも感謝しています。
なんて、自分の話ししてスイマセン(笑)

白井さんの思い。話してくださってありがとうございます。
まだ、続きがあるみたいですね。

みなさんのコメントにもあるように、
やっぱりいつの日か、「白井ファイターズ」が実現してくれることを夢見てしまいます。
Posted by みにら at 2008年10月30日 13:59
そうだったんですね。。。

失礼な話ですが
白井さんがこのブログを書かれるまで
なーーーんにも知りませんでした
名前と性別くらいしか。。。笑

ただ漠然と「白井さんってなんか好き」って
感じていたものはそういった一本筋の通った
人間性がにじみ出ているからだったんだなぁって
今思っています。

今活躍しているファイターズの一軍登録選手達の多くは
白井さんの育成方法で立派に育ってきたんですねぇ

それを知った今
本当は今すぐにでも、白井さんの指導を再開して欲しいところですが
色々な事情もあるのでしょうから
待ちますね

腹ぺこの方が ご飯は美味しいし☆彡

では、続きの話また聞かせて下さいね(^^)/
Posted by りさ at 2008年10月30日 15:53
白井さんのお話し、深く感じ入りました。
大きなバッシングの中で、強い意志を持って貫いた勇気…今のファイターズのチームの伸びやかさが大好きなんですよ。
白井さんが戻ってくるまで、培われていますように!続きをお待ちしています!
Posted by なお at 2008年10月30日 20:05
白井コーチがいた時の負けても納得、楽しかった野球がみたいです。絶対Fsに戻ってください。待っています。
Posted by moko at 2008年10月30日 22:45
なんだか胸がじ~んとしてしまいました。白井さんが大好きです。ファイターズが大好きです。優勝を取り戻すには、白井さんが居ないとダメです。いつかきっと…また白井さんの笑顔が見れる日まで、札幌ドームで待ってますね!
Posted by アトム at 2008年10月31日 00:26
うーん・・・。
改めて文として拝見すると心に響きますね。

プロ野球である以上 常勝 は必須条件なのでしょうが、

勝ち負け(勝負)以外に大切なものが野球にはあるのでしょうね。

その魅力を教えて下さったのが白井ヘッドでした。

本当に感謝しています。

白井ヘッドの「3」がファイターズにとっての生命線であると感じています。

北海道のチームらしく厳しい冬を乗り越えていけると良いですね!
Posted by OPUS ONE at 2008年11月01日 00:11
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
投稿されたコメントは内容により不適切と判断した場合、あしたさぬき運営事務局にて削除する事がありますのでご了承下さい。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
野球のこと
    コメント(19)